Suginami H House （杉並H邸）
敷地は杉並区善福寺。
善福寺池公園を南北に分断する道路に敷地の北側が面し、その道路をとおる車の音以外は、比較的静かに恵まれた環境だと思います。
まず駐車場は敷地北東の私道に平行に設定し、2台分を縦列に確保しました。
現状の駐車スペースに1台追加するだけですので工費を抑えられますし、敷地と道路とのレベル差が最小になる部分を、アプローチに利用することが望ましいと考えたからです。
そして残された部分に、敷地境界線からのセットバックの規定限界まで建築を寄せ、庭を包み込むようにＬ字型に配置しました。
こうすることで庭に奥行きができ、屋内の様々な場所から庭の眺めを楽しむことができます。
リビング・ダイニングをあえて接地させず2階に配置し、ルーフテラス、1階の主庭へと、多様な外部空間と連続させることで、より明るい解放的な空間が可能となります。
北側の開口からは善福寺池公園をも望めるかもしれません。
ルーフテラスは視線をさえぎる壁や可動式テントにより心地よい外部スペースとなっています。
時には気分を変えて屋外で食事など楽しまれてはいかがでしょうか。
外部階段により主庭とも回遊性を持たせています。
各階とも端部に水廻りや倉庫などを配置することにより、両端部を構造的に固め、中央部に大きなワンルーム空間を確保できるようにしました。
1階居室の間仕切りは可動の家具や全引込みの建具によりゆるやかに仕切り、空間を自由に調節可能とし、時には廊下さえも一体空間となるようにしました。
将来対応としましては、主庭にエレベーターの設置も可能です。
盛土された造成地の地盤を考慮して、構造形式は鉄骨造とします。
鉄骨造なら大スパン構造によるワンルーム空間も可能となります。
居室の温熱環境は、ラジエーターによる輻射熱暖房とし、外断熱により性能を向上させます。
夏場は屋根面でのスプリンクラー散水を行い建築が蓄熱するのを防ぎます。
外装材はガルバリウム鋼板やセメント成型板等を用い、メンテナンス時の費用を軽減するよう配慮しました。
とかく北側立面というのは必要最小限の開口におさえられ、殺風景になりがちです。
しかしこの敷地においては北側道路の往来も多く、この家の顔ともなる重要なファサードです。
三角に飛び出した出窓をリボン状に設置し、表情豊かに表現しました。
内と内、内と外がゆるやかにつながったり仕切られたりしながら、自由な空間を創造できるよう、そんなフレキシブルな装置としての住まいをイメージしました。
夫婦の語らい、大勢の家族との語らい、自然や時間の移ろい・・・
様々な語らいを楽しみ味わっていただけるような住まいになればと思います。
